Fly High ! ER・ICU学習記録

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せん妄高リスク患者への予防的ハロペリドール

★JAMA★

Effect of Haloperidol on Survival Among Critically Ill Adults With a High Risk of Delirium   The REDUCE Randomized Clinical Trial  February 20, 2018 

 ICUにおけるせん妄発症率は大体30-50%で、80%って報告もある。

せん妄を生じると

 -生命予後の悪化

 -ICU滞在日数や入院期間の延長

 -ICU退室後の認知機能の悪化

を引き起こす。

 

治療としてはハロペリドール(セレネース®)が使われることが多いが、せん妄期間を短くするというエビデンスはない。リスペリドン(リスパダール®)、クエチアピン(セロクエル®)、オランザピン(ジプレキサ®)といった非定型抗精神病薬はせん妄期間を短くするかもしれんっていうレベル。

予防としての薬剤使用はデータ不十分なため推奨されていない。

(PAD ガイドライン2013 Crit Care Med. 2013 Jan;41(1):263-306.)

 

せん妄高リスク成人患者において、予防的ハロペリドールが死亡率を改善するか(reduceするか)を調べたのが今回の論文。

1789例のDB-RCT (オランダ21施設)。

 対象は

 ICU2日以上の滞在が予測されるせん妄高リスク成人患者。

除外は

 すでにせん妄、パーキンソン病認知症、アル中

 急性神経系疾患、過去に精神疾患既往

 抗精神病薬の内服

 12ヶ月以内の心室不整脈、QT延長 (>500msec)

 妊婦・授乳中、ハロペリドールアレルギー

 2日以内に死にそう、ICがとれないなど

 

上記の患者を、

 ハロペリドール1mg (350名)

 ハロペリドール2mg (732名)

 プラセボ (707名)

に割付

 

主要評価項目は、

 -28日間の生存日数

副次評価項目は、

 -90日生存日数

 -せん妄の発症率

 -28日までにせん妄や昏睡をおこさなかった日数

 -人工呼吸器装着日数

 -ICU滞在日数

 -入院期間

 -有害事象

 など合計15項目。

 

結果、

年齢の中央値は66.6才、男性が61.4%。APACHEⅡは19点ぐらい。

ハロペリドール1mg群は途中で中止になった。

 

ハロペリドール2mgとプラセボにおいて、

28日生存日数に有意差なし。(差は0days 95%CI, 0-0;P=.93)

生存率は83.3% vs 82.7%。

 

15項目の副次評価項目も有意差なし。(せん妄発症率は33.3% vs 33%)

副作用も有意差なしと。

 

結論としては、せん妄ハイリスク患者に予防的にハロペリドールを投与しても予後を改善しない(reduceしない)。

 

Limitationは色々あるけど、ハロペリドールで予防できないっていうのは予想どおりの結果。

しかし、本当にせん妄は厄介。日中起こして早期リハや時計・カレンダーとか近くにおいてせん妄ならないようにがんばっても、夜になるとなんかスイッチ入ってせん妄になっちゃうんよねー。特に高齢者。なんとかならんかなぁ。