気管挿管は院外心停止患者の神経学的予後を悪化させるか?
★JAMA★
Effect of Bag-Mask Ventilation vs Endotracheal Intubation During Cardiopulmonary Resuscitation on Neurological Outcome After Out-of-Hospital Cardiorespiratory Arrest February 27, 2018
院外心停止(OHCA)患者において、CPR中の気管挿管(ETI)は死亡率増加と関連があるって大規模観察研究やシステマティックレビューがある。
例えば、
1. JAMA 2013;309(3):257-266.
日本ウツタインでの成人OHCA患者前向データ (n=649,654名)。神経学的良好生存はETIで1.0%、声門上器具(SGA)で1.1%、バッグバルブマスク(BVM)で2.9%であった。
2. Resuscitation. 2014;85(5):617–22.
アメリカCARESレジストリでの心原性推定のみの後向データ(n=10,691)。神経学的後遺症なき生存はETI群5.4%、SGA群5.2%、no advanced airway 群18.6%であった。
理由として考えられているのはBMVのほうが
・簡単にできる
・胸骨圧迫の邪魔しない
・合併症が少ない
からいいのかもねー。
ということで、BMVはETIと比較して、28日後の神経学的良好生存が非劣勢だろうという仮説でRCTをしたよ。っていうのが今回の論文。
多施設RCT (ベルギー・フランス、20のプレホスEMSセンター)で、
対象は、18歳以上の院外心停止患者。
除外基準は蘇生前の大量誤嚥、DNAR患者、妊娠など
CPR中の気道確保をBMV群or ETI群に割付。
主要評価項目は
・28日における神経学的良好生存 (CPC1 or 2)
副次評価項目は
・入院時生存率
・28日生存率、
・ROSC率
・etc
統計手法として、BVMの非劣性を示すため、BVM群と気管挿管群の予後良好率を3%、2%と見込んで非劣性閾値1%で症例数設計をおこなった。
結果は。。。
登録されたのは2043人。
患者は65歳くらい。女性が3割くらい。
心停止の原因は心原性が70%弱
初期波形はshockable rhythmが15%
28日における神経学的良好生存(CPC1 or 2)は
BMV群で4.3%、ETI群で4.2% (非劣勢の P= 0.11)
ROSC率はBMV群で34.2%、ETI群で38.9% [95% CI -8.8% to -0.5%]とETI群でよかった。
入院時生存率はBMV群28.9%・ETI群32.6%、28日全生存率はBMV群5.4%・ETI群5.3%で有意差はなかった。
合併症はBMV群で有意に多かった。
|
BMV |
ETI |
P値 |
全て |
18.1% |
13.4% |
P=0.004 |
気道確保失敗 |
6.7% |
2.1% |
P <0 .001 |
胃内容逆流 |
15.2% |
7.5% |
P <0 .001 |
ってことで、
両群の生存アウトカムに有意差はなく、BMVの非劣性マージンを満たすことは出来なかった。