急性・慢性心不全診療ガイドライン2017 主な変更点
Guidelines for Diagnosis and Treatment of Acute and Chronic Heart Failure (JCS 2017/JHFS 2017)
2018/3/23 日本の心不全ガイドラインが改訂されました。
最大の変更点は,急性心不全と慢性心不全に分かれていた心不全診療ガイドラインが1本化されたこと。これは,急性心不全の多くが慢性心不全の急性増悪であり,急性期から慢性期までシームレスな治療の継続が必要であることから,診療ガイドラインも急性と慢性の2つに区分するのは現実的でないという認識に基づいてとのことです。AHAもESCも既に統合されており、その流れに追従した感じですね。主な変更点は下記の10項目です。
1. 心不全の定義を明確化
<ガイドラインとしての定義>
なんらかの心臓機能障害,すなわち,心臓に器質的および/あるいは機能的異常が生じて心ポンプ機能の代償機転が破綻した結果,呼吸困難・倦怠感や浮腫が出現し,それに伴い運動耐容能が低下する臨床症候群
<一般向けの定義>
心不全とは,心臓が悪いために,息切れやむくみが起こり,だんだん悪くなり,生命を縮める病気です.
2. 心不全とそのリスクの進展のステージを記載
AHAでは2001年から記載されているステージ分類です。心不全の経過をみるにわかりやすい図だと思います。
3. LVEFによる心不全の分類
2013のAHAのガイドラインでEFにおける心不全の分類としてHFpEF, HFrEF, HFpEF improvedが記載されました。2016のESCガイドラインでHFpEF, HFrEF に加えHFmrEFが新たに記載されました。今回JCSのガイドラインでは全て記載。ちなみにHFpEFはヘフペフ、HFrEFはヘフレフっていいます。認知度が低いときにつぶやいたらそんな読み方するわけ無いやろー。なんの呪文やねんって笑われたのはいい思い出。HFmrEFやHFrecEFはなんて呼ぶんだろうか。
<BNP>
2013年に日本心不全学会予防委員会がだしたコメントをそのまま採用されています。
<心エコー>
拡張障害の診断について記載されています。
5. 心不全予防
<高血圧>
特にサイアザイド系利尿薬は心不全の発症予防効果が高いとのことで推奨Class1 エビデンスレベルAで記載されています。
<心筋梗塞>
二次予防として、ACE阻害薬、β遮断薬、スタチン、ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬が推奨Class1の記載。ニコランジルが書いてあるのも、日本のガイドラインって感じです。
<糖尿病>
糖尿病治療薬で唯一心不全予防効果を示したSGLT2阻害薬が推奨Class1 エビデンスレベルAで記載。SGLT2の試験結果は衝撃でしたからね。
コンパクトに纏まってます。
7. 併存症の病態と治療
高血圧、糖尿病、CKD・心腎症候群、高尿酸血症、COPD・喘息、貧血、睡眠呼吸障害
について記載有り。充実しています。
<肺エコー>
肺水腫の鑑別診断において肺エコーによるBラインの感度は94.1%、特異度は92.4%。もはや肺エコーは必須ですね。
<特殊病態の対応としてMR.CHAMPHの記載>
Myocarditis(心筋炎)
Right-sided HF (右心不全)
aCs (急性冠症候群)
Hypertensive emergency (高血圧緊急症)
Arrhythmia (不整脈)
acute Mechanical cause (機械的合併症)
acute Pulmonary thromboembolism (急性肺血栓塞栓症)
High output heart failure (高拍出性心不全)
ESC2016ではCHAMPだけでした。
10. 緩和ケア
アドバンス・ケア・プランニングとか終末期心不全、チーム医療の重要性など。今いちばん大事なところですね。